コングロマリットディスカウントってなんだろう?【多角的経営企業vs専業企業】

投資の神様 ウォーレン・バフェットは「理解できない企業には投資しない」としてコングロマリットへの投資は避けています。 (ちなみにバークシャー・ハサウェイ自身は投資会社からコングロマリット化しています。)

株式市場はコングロマリット企業をどのように評価しているか見ていきたいと思います。

コングロマリットディスカウントってどういう意味?

  • コングロマリット(conglomerate) = 多角的経営を行う企業体
  • ディスカウント(discount)      = 割引き

直訳すると「多角的経営を行う企業の(価値)割引き」という意味です。

多角的経営を行っている企業でイメージしやすいのは「カップラーメンから航空機まで 」でお馴染みの総合商社です。
近年では祖業のトレーディングや資源開発のみならず、自社のサプライチェーンを生かした事業投資を積極的に行っていますね。
総合商社とコンビニの関係はそのよい例です。

また、欧米の企業で言うとルイ・ヴィトンやDiorを傘下に収める「LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」はハイブランドファッションのみではなくワインやスピリッツ、自転車メーカーも傘下に収めて事業を展開しています。

前置きが長くなりましたがコングロマリットディスカウントとは、複数の産業に多角化した企業は同じ産業の専業企業よりも株式市場で低く評価される傾向を意味しています。

次節では事業の多角化戦略の優位性と劣位性を見てみます。

多角化戦略のアドバンテージ

1)経営資源の効率的な分配、シナジー効果
 ・オペレーティングシナジー
 ・財務シナジー
2)事業の分散が利いており企業収益の変動に強い
3)成長が見込まれる分野への事業領域拡大

傘下に収める企業間の類似事業を集約したり、製品の部品共通化等がオペレーティングシナジーに当たる一方で、内部資本の有効活用が財務シナジーです。

企業も株式投資と同様に複数の卵を一つに盛らないことで、一方の事業が不振でも他方の事業で安定した収益を上げることができます。

多角化戦略のディスアドバンテージ

1)経営者の専門性欠落により効率的な経営判断ができない恐れがある
2)不採算部門の整理に踏み切れない恐れがある
3)拡大による傘下企業間の事業の重複が発生し効率的な投資を行えない恐れがある
4)事業間の分断による非効率な資源配分が発生する恐れがある

(脱線ですが1)、2)はエージェンシー問題の側面もあり、経営者が必ずしも株主の利益を追求できていない経営判断を行ってしまうことです。)

市場はコングロマリット企業をどのように評価しているのか?

企業の多角化を否定的に捉える立場からはアドバンテージよりもディスアドバンテージに挙げられているように効率な経営できないとの指摘を受けています。

実際、多角的経営企業は専業企業と比較すると市場から低く評価されているとの研究結果もあります。

We estimated diversification’s effect on firm value by imputing stand-alone values for individual business segment. Comparing the sum of these stand-alone values to the firm’s actual value implies a 13% to 15% average value loss from diversification during 1986-1991.

Diversification’s effect on firm value – Philip G. Berger, Eli Ofek (1995)

古い研究ですが和訳すると「BergerとOfekは企業価値に対する多角化の影響を専業企業のstand-alone価値※を転嫁することによって評価した。 多角的経営企業の実際価値  とstand-alone価値全体を比較することによって、1986-1991年のあいだ多角的経営企業から企業価値が平均して13%から15%失われているとの示唆を得た。」ということです。

※ stand-alone価値:シナジーによる価値を加えない、単独企業としての買収対象企業の株主価値のこと。

ちなみに、日本においては多角経営企業は専業企業と比較して6%から7%ほど市場から低く評価されていると 牛島辰男氏は「多角化ディスカウントと企業ガバナンス(2015)」のなかで分析しています。

コングロマリット企業への投資は?

ここまでコングロマリット企業の優位性及び劣位性、市場からの評価を見てきました。

筆者の個人的な意見ですがこれらの企業に投資する立場では以下のように考えます。
コングロマリット企業は「比較的配当利回りが高い傾向にある」、「相対的に資産背景が堅い」、「事業分散が利いているので変動に耐性がある」、「専業企業と比較すると効率性が悪い」。

BergerとOfek の研究から20年が経過しており当時の企業統治やIR情報開示は大きく変化していることは間違いありません。

投資先のコングロマリット企業が効率的な経営ができているかどうか企業分析をしっかり行ったうえで投資判断ができればと思います。

本稿は間違いのないよう細心の注意を払っておりますが情報の信頼性を確約するものではないことをお断り致します。
投資は自己責任でお願い致します。

最後までお読みいただきありがとうございました。